お客様の車を自分の車だと思って大切に扱う ということ

「お客様の車を自分の車だと思って大切に扱う」

車屋側がこんな事を言うと、

(な~に、綺麗ごと言っちゃって。)

と思われるかもしれません。

でも、これってすごく大事な事で、そのまま自分に返ってくる。

つまり、自分のためでもあるのです。

今回は一般ユーザーさんだけではなく、車屋さんにも読んでもらいたいお話です。

 

私がこの名言を教わったのは、まだ独立前のこと。

とある中古車屋の社長さんから教わりました。

その社長さん曰く、

「お客さんの車は何年後かに乗り換える時に下取りとして戻ってくる。

つまり、将来的には自社の在庫車、商品なんだ。

だから、お客さんが乗ってくれている間はちゃんと点検してあげて、お客さんのお金でしっかり整備してもらう。

そうすれば車も壊れないからお客さんも安心だし、将来下取りで戻ってきたときに良い状態で次のお客さんに販売できる。

素性が分かっているから高く下取りできるし、余計な整備費用も要らないから次のお客さんに格安で販売できる。

オークションに出しても状態のよい車は高く売れる。

仮に他店で乗り換えてしまったとしても、乗ってもらっている間は整備費用で稼げる。

そもそも、点検や車検など定期的に入庫してもらうことによりお客さんと密な関係を築けて、

買い換え時に他店へ流れてしまう事も減る。

お客さんにとっても、店側にとってもお互いに得なことになるのさ。」

と。

なるほど。

当時私が勤めていたのは買い取り専門店で、販売もしましたが基本的に売ったら売りっぱなし。

その前のディーラー営業マン時代も車検点検誘致なんて面倒くさいくらいにしか思ってませんでした。

 

独立してからは、常にこの事を心掛けながら仕事をしてきました。

仕入れの選び方については、自分がもしこの車種に乗るのなら、こんな状態の車に乗りたいな。

逆にこんな状態の車は嫌だな。

とか

整備についても、これがもし自分の車だったら、ここはしっかり整備しておきたいな。

とか

 

旧型JA系ジムニーのコンプリート製作をするようになってからも、

もし、自分がこの車に乗るのなら

という観点で車を造ってきました。

自社でエンジンをオーバーホールするようになり、

オールペンを外注に出すのも止めました。

 

でも、こういった教えは1年や2年で効果が表れるものではありません。

やっていてよかった、と思えたのはここ数年のことです。

開業して何年か経って、自社で販売した車の買い取り相談を受ける機会がでてきました。

手塩にかけて造った車。

我々にとっては我が子のようなものです。

通常、車を買い取る時にはまずオークション相場、卸値を基準としてみますが、

自社製作の車に関してはそれをまるっきり無視して値付けができます。

同じ年式、走行距離でも、素性が分からない中古車と、

うちが丹精込めて作って、お客様が大事に乗ってきた車が同じ訳がありません。

買い取り相場から比較するとありえない金額で買い取りしても、

売りに出せば、ほとんどの車は一瞬で売れます。

 

同じ車で一度だけでなく二度、三度と再販させて頂いたこともあります。

 

お客様は車が高く売れて、弊社もそこで再び商売させてもらえる。

さらに次のオーナーさんもリーズナブルに良質な車を購入できる。

お互いにお得な話なのです。

 

そんな気持ちで車を造ってますので、

想定外に時間が掛かってしまうことは多々あります。

相手は古い車です。

一見良質に見える車でも、塗膜の下にサビは潜んでます。

塗装を剥がして、見なければよかったと思う事は多々あります。

上からパテをなすって終わりにするのは簡単です。

しかしそれですと、数か月で下から湧いてきてしまうでしょう。

メカも同じ。

え、こんなところも壊れてる!

といったことも増えてきました。

知ってしまった以上、そのまま納車はできません。

ご注文されているオーナー様、このような理由で時間は掛かってしまいますが、

どうかご理解ください。

 

この話にはオチがありまして。

このことを教えてくれた車屋さん、実はその後廃業されてしまったのです。

途中からおかしくなってしまい、人を騙すような商売をするようになり、

信用を失い潰れてしまいました。

「人を騙すような商売をしてはいけない」

という大事なことも、自ら反面教師となり教えてくれたのでした。