少し前にお騒がせした、社外クロスメンバーは車検通らない?というお話。
当時、しっかりした対処案は未定ということで暫定的に車検が通った状態でしたが、
つい最近になって軽自動車検査協会から電話が来て、
「社外品でも問題なく車検OKで決まった」、との報告を受けました。
車検証備考欄に記載された破壊試験云々の但し書きも消してくれるとのこと。
今さら感も否めないですが、結果オーライでよかったです。
先に決めておいてくれよ、っていうお話ですけど。
で、ジムニー業界でそれ以上に懸念されているのが、2021年9月以降の新規登録車に適用される、
突入防止に関わる法改正。
これも実際に車検合否の話が出るのが初回車検を迎える2024年9月以降になると思うのですが、
新車をカスタムして販売する立場からすると、今のうちから対策を考えておく必要があります。
まずこの法規についておさらいします。
令和3年9月以降に新規登録される車(ラダーフレーム車 モノコック車は除外)
は、高さ600㎜以下の位置に基準を満たす突入防止装置を備えなければならない。
この趣旨を要約しますと、
車高が低い車が、車高が高い車に追突したら、車体下部に潜り込んでしまい危ないよね。
だから、地上60㎝以下の部分に突入防止装置をつけようね。
ということです。
へー。
ジムニーの場合、メーカーの見解では
リヤバンパーとその内側にあるメンバーが突入防止の構造物になりますので、
そこを地上高60㎝以下に抑える必要があるのです。
令和3年9月以降はリフトアップできなくなる?噂の法改正について 突入防止装置 JB64 JB74
こちらの記事でもお伝えしましたが、
1incアップで225/75R16のタイヤを装着した車輌で計測すると、約63㎝でアウト。
2インチアップとか、3インチアップは間違いなく駄目です。
1インチアップでノーマルタイヤがギリギリではないでしょうか。
だったらリフトアップ諦めればいいじゃん!という声も聞こえてきそうですが、
やっぱりジムニーはリフトアップして大きなタイヤを履かせたいという方が多いでしょう。
なんとか対策を考えなければなりません。
まっとうに考えれば、
リフトアップしたら、基準の高さに突入防止装置を装着する
となりますが、これが意外とハードルが高い。
突入防止装置はなんでもよい訳ではなく、
破壊試験を行い、強度、要件を満たしている物でないと駄目です。
つまり、商品化しようとなると開発コストが結構掛かります。
そもそも、
地上高を上げてアングルを稼ぐためのリフトアップなのに、
わざわざ低い位置に障害物となるバーを装着するなんぞ本末転倒です。
意味わからないし、間違いなくダサい。
そこで、全く別のアプローチでの対策を考えました。
車検時にわざわざサスを組み直すとなると、工賃も掛かるし大変です。
そう、簡単に、瞬時に車高を上げ下げできればよいのです。
エアースプリング いわゆるエアサス
エアーの圧力を変えることにより、バネの硬さや車高を自在に変えることができます。
その特性から荷重が大きく変化する大型トラックやバスに多く使われていますし、
乗り心地が良いことから高級セダンやSUVにも採用されています。
また、カスタム業界でも珍しくはない手法。
着地するほどのグランドスラムからライドハイトまで上げ下げするのに都合がよいのです。
ジムニーで今回のような趣旨の場合、
コイルスプリングを排除してエアスプリングだけにする手法は向かないと判断しました。
エアバッグのスペース的な問題と、ストロークの問題。
さらに構造変更の手間が掛かります。
そこで、コイルスプリングは残し、エアーショックで車高上下をアシストする手法を選びました。
これなら、構造変更手続きも要りません。
そのためには、まず専用設計のコイルスプリングを用意する必要があります。
エアアシスト無しの設置状態で車検が通る範囲の車高。
そしてエアーを入れて車高を上げた際に、遊ばない 外れないだけの十分な長さを確保できること。
つまり、通常よりも柔らかくて長いという、特殊なスプリングが必要なのです。
いつもお世話になっている業者さんに目的を伝え、計算して試作品を作ってもらいました。
そのスプリングに、ちょうど良いと思われる長さのエアーショックを組み合わせます。
テストで弊社のJB64に装着しました。
フロントはいつもの3㎝UPスプリング、タイヤサイズは225/75R16です。
エアー全抜き状態
メンバーの高さは59㎝くらい。
ノーマルタイヤに換えなくても余裕で車検OK。
エアー圧MAX 全上げ状態
高さは67.5㎝くらい。
見た感じ、3インチアップと同等な高さはあります。
この状態でもスプリングはまだ余裕があります。
実質、8.5㎝ほどの車高上下が可能ということになります。
ただし、ライドハイトとして使える領域は限られます。
エアー圧が低いとコイルスプリングのレートが低いのでフニャフニャですし、
MAX上げの場合は伸び側ストロークが無くなってしまいます。
装着してから2週間ほど毎日通勤で使用。
エアー圧を調整することにより車高だけでなく乗り心地もコントロールできるのが嬉しいところ。
先日は海岸でオフロード走行のテストもしてきました。
どうでしょう、この伸びっぷり!
これでライドハイトは実質約1インチアップ、Fスタビは外してません。
単純に車検に適合させるために考案したサスペンションですが、
通常のコイルサス以上に柔軟に伸びる足
積載量、荷重に応じて適正な車高、硬さ補正ができる
乗り心地も好みで調整可能
という思わぬ利点を手に入れました。
今回のテストで、リフトアップ量に対する適切なショック長を把握できました。
発売構想です。
1インチ(約3㎝)アップ 前後サスペンションキット
1~2インチアップ用 リア エアーアシストコンバージョンキット
既に1~2インチアップされている車輌をエアーアシスト仕様にバージョンアップするキットです。
3インチアップ 前後サスペンションキット
3インチアップ用 リア エアーアシストコンバージョンキット
既に3インチアップされている車輌をエアーアシスト仕様にバージョンアップするキットです。
こんな感じで考えています。
さて、3インチアップ用のショックが届きましたので装着してテストしてみます。
お楽しみに。