はるばる茨城県からエンジン載せ換えでご入庫頂きました。
なんでも、九州方面のショップからエンジンオーバーホール済みということで購入したJA22ジムニーが、納車当初からすこぶる調子が悪く、
色々手を尽くしてみたが一向に改善されない、とのこと。
ディーラーにも入庫し、インジェクターが悪いと言われ交換したものの、症状は変わらず。
挙句の果てには「うちでは原因が分かりません。」と。
ディーラーってそんなレベルなんでしょうか。
入庫して試乗した感想は、
「低速トルクが全くない。」
派手に空吹かしして回転を上げてあげないとまともに発進できないし、
ちょっとしたスロープも登れない。
圧縮は均等に10前後あったそうで、OH済みというふれこみからもエンジン本体の要因は一見無いかと思いがちですが、
過去の経験からエンジン本体の要因と判断、エンジンを降ろしました。
ちょうど組みあがっている前期エンジンの在庫がなかったので、現物をOHすることになり、そのまま分解します。
洗浄後に各所測定、加工という流れになるのですが、
洗浄槽から上げたエンジンを見て愕然としました。
メタルやピストンリングなどは新しい物に交換されていて、確かにOHされた痕跡は見られます。
しかし。
錆びが酷い。
シリンダーライナーの冷却水通路側が激しく腐食しています。
(ブロック本体はアルミですが、ライナーは鉄)
ヘッド燃焼室のスス汚れは綺麗に落ちましたが、冷却水通路は茶色いまま。
ヘッドは機械で面研された痕跡が見られました。
ということは、ヘッドガスケットが抜けてエンジンをOHしたのでしょう。
それにもかかわらず、冷却水が抜けている跡が残っています。
ヘッドが歪んでしまった場合は、ブロック上面も歪むのでセットで面研するのがセオリーですが、
ヘッドとは明らかに違う削り跡が。
オイルストーンで手作業で削ったような痕跡がありました。
(ピントうまく合っていなくてすみません。)
これではメタルガスケットで気密性を保てる訳がありません。
油汚れで気付かなかったのですが、洗浄してみるとコンロッドやクランクシャフトもさびていました。
(こちらもピンボケですみません。)
恐らく水が回った状態でしばらく走行してしまったか、放置してしまったのでしょう。
冷却水が減るから真水を補充することにより錆びも進行するという悪循環。
ここまでくると、このエンジンはベースとして使えません。
もしやるのであればライナー打ち換え、オーバーサイズピストンとなりますが、相当コストが掛かります。
それでも冷却水通路のサビは取りきれません。
諦めた方が賢明です。
下取りエンジンがこのような状態ですと、コアチャージ料をお客様に請求しなければなりません。
下取りしたエンジンをベースに次のエンジンを製作しますので、これがないと正直赤字になってしまいます。
これはどこのリビルト屋さんも同じです。
結局、リビルト済みの22後期エンジンをインマニやフライホイールごとごっそり移植しました。
完調状態の、ごく普通のJA22ジムニーのフィーリングになりました。
現在ジムニーにお乗りの方で、実は調子が悪くてもそれが普通だと思い込んで、そのまま乗っている方も多いかもしれません。
これは非常に勿体無い話です。
現在当店には、自社で製作したエンジンを搭載した、試乗可能なJA22ジムニーのテスト車輌がございます。
走行20万キロオーバーですが、各所OH済み。
ブーストUPなどチューニングは一切してませんが、いたって快調に、気持ちよく走ります。
自分の車のコンディションが気になる方は、是非乗り比べてみて下さい。
これが基準なのです。
(以前コンディションの良い実走行3万キロの車にも乗りましたが、ほぼ同じフィーリングでした。新車に近いコンディションといっても過言ではないと思います。)
積載車でお届け納車してきました。
ありがとうございました。
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