前回、最近のK6A事情を書きましたが、
ジムニー屋としては外すことができないF6Aエンジン事情についても書きたいと思います。
JA11時代から、JA22でK6Aが登場してからもJA12用として併売されていたF6A SOHC TURBO。
K6Aよりも頑丈と思われている方も多いですが、
ふたを開けてみると「かろうじて動いている」個体が多いのも事実です。
まず、シリンダーブロックの素材の話。
F6Aは鋳鉄、K6Aはアルミです。
F6Aは鉄だからアルミのK6Aより強い
と認識されている方も多いようですが、これは大きな間違いです。
それを言ったら、現代の車のエンジンはみな弱いということになってしまいます。
強度の差の要因は素材の違いではなく、構造の違いです。
F6AとK6Aの大きな違いは、シリンダーライナーの構造です。
F6Aはライナー全体がブロックに埋め込まれ、その周りに冷却水穴が開いているクローズデッキ構造。
それに対しK6Aはライナー全体が冷却水水路に面しているオープンデッキ構造です。
冷却面では優れている一方で、
ライナーの固定がブロックに圧入されている下部とシリンダーヘッドにより押さえられているだけなので
首振り現象を起こしやすいという弱点があります。
ブロックが鉄でできているということは、アルミより錆びやすいということ。
冷却水交換を怠り、LLCの防錆効果が無くなった状態で乗り続けると、こうなります。
ちなみにK6Aエンジンはブロックはアルミですが、ライナーは鉄なので同じように錆びます。
クーラントはけちらず車検毎に交換しましょう。
F6A SOHCで多い症例が、ヘッドのクラック。
プラグホールとバルブシート間にクラックが入ってしまっている個体は非常に多いです。
クラックが深かったり、3気筒全てにクラックが入っているような個体は再利用は避けたいです。
オイル消費、白煙の原因はK6Aと同じです。
ピストンのオイル穴は、ほぼ詰まっています。
ちょうど現在、お客様からOH依頼でお預かりしているエンジンが
分解洗浄まで終わったところです。
こちらを例に挙げさせて頂きます。
オーバーホールを決意されたきっかけは、ヘッドガスケットからエンジン外側に冷却液が漏れはじめてしまったから。
ヘッドをはぐると、冷却水路が謎の固形物により塞がっている状態。
サビなのか、変質したガスケットか。
これでは水の流れが悪く、ヘッドが十分に冷却できていなかったことが想像できます。
定番のクラックですが、本機は割れが深く、欠けも生じています。
このまま組むのは心配な状態。
バルブシートを抜き、レーザー溶接による補修をすることになりました。
数年前は捨てるほどあったF6Aエンジンですが、
現在は良質なベースが激減してしまいました。
致命傷になる前に、オーバーホールはお早目にどうぞ。