ここのところ多い問い合わせのひとつが、アイドルアジャストスクリュー。
アイドリングのエアー量を調整する小さなスクリュー(ネジ)なのですが、
これがだんだん緩んで、しまいにはどこかへ飛んで行ってしまうのです。
当然のことながら吸入空気量は増大しますので、アイドリングは上がり大変なことになってしまいます。
しかもこの部品、困ったことに単品で供給されていません。
スロットルボディーアッセンブリーでしか出ないのです。
スロットルはリビルトで約3万!純正新品はもっと高かったと思います。
弊社の顧客様でも何件かこの事案があり、
手持ちの中古部品は使い果たしました。
他店購入のお客様からも何件か問い合わせを受けましたが、ごめんなさい、もう在庫はありません。
元々はスクリューの上にゴムのカバーのようなものがあるのですが、
これが無くなっている個体は多いです。
対策としては原始的ですが、上からガムテープを貼っておくくらいしかなさそうです。
ちょうど別の顧客様より、
「アイドルアジャストスクリューとはなんぞや?」
というご質問を頂きました。
タイムリーなネタですので、ここで書きたいと思います。
JA22ジムニーのK6Aエンジンのアイドリング時の吸入エアー量は、
アイドルアジャストスクリュー
と
ISCV
のエアー量の合算になります。
アイドルアジャストスクリューは基本的に固定ですので、
アイドリング回転数を制御しているのはISCVになります。
暖機完了後はECUが演算し、950rpmになるようエアー量を自動制御します。
ISCVは弁の解放面積で流量を調整しているのではなく、
開閉を絶えず細かく繰り返して、その回数によって流量を調整しています。
そのため、エアクリーナー辺りからポコポコといった脈動音が聞こえることがあります。
整備書を読むとアイドリング回転数は基本的に自動調整で、アイドルアジャストスクリューによる調整はNGです。
これはISCVのデューティー比が絡んでくるからです。
例えば、アイドルアジャストスクリューを開ければISCVはその分エアー量を絞って回転を下げようとしますし、
締めれば不足した空気を補おうとエアー量を上げて回転を上げようとします。
ISCVのMAX増方向とMAX減方向のちょうど真ん中あたりで950rpmにくるのが、アイドルアジャストスクリューの調整ポイントでしょう。
これを見極めるにはデューティーチェッカーなるものが必要になります。
ではアイドルアジャストスクリューは何のためにあるかというと、
ISCVで制御しきれない範囲の調整を行いたい場合の手段になると思います。
例えば、
ISCVが故障して適切なアイドル制御ができない
規定外の回転数に調整したい
などが考えられます。
規定の回転数は950rpm(+-50)ですが、
それよりも低くしたい、あるいは高くしたい場合はアイドルアジャストスクリューで強制的に変えてしまうことができます。
さて、顧客様の質問は燃費向上のためにスクリューでアイドリングを下げましたが、問題ないでしょうか?
というものでした。
特に問題はありませんが、燃費向上という面ではあまり期待はできなそうです。
アイドルスクリューを絞って回転を下げればISCVや燃料噴射は回転数を上げる方向に制御しようとします。
また、アイドリング時の燃料噴射量は少ないので、少し回転数を抑えたくらいでは燃費はほとんど変わらないでしょう。
回転数を下げると不快な振動も増えますし、あまりに下げすぎると最悪ストールします。
そして、純正タコメーターには意外と誤差があるということもお忘れなく。
アイドルアジャストスクリューはカーボンが付着しやすい部分でもあります。
ここにススが蓄積するとエアー量が制限されてしまい、ISCVで調整しきれずにアイドリングが下がってしまうことがあります。
アイドリングが妙に低いなと感じたら、チェックすべき項目です。